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大津地方裁判所 平成7年(特わ)366号 判決 1996年3月29日

本店所在地

兵庫県西宮市中前田町六番二号

渡辺観光株式会社

右代表者代表取締役

渡辺商浩

本籍

奈良県香芝市穴虫三〇八〇番地の九

住居

兵庫県西宮市甲陽園東山町九-六四

モンテベルデ甲陽園四〇二号

会社役員

渡辺商浩

昭和三七年二月二三日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官西浦久子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人渡辺観光株式会社を罰金三二〇〇万円に、被告人渡辺商浩を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人渡辺商浩に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人渡辺観光株式会社は、兵庫県西宮市中前田町六番二号に本店を置き、遊技場の経営等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人渡辺商浩は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人渡辺商浩は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法により、所得を秘匿した上、平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が五億三二五〇万四五七五円であった(別紙修正損益計算書参照)にもかかわらず、平成六年五月二七日、兵庫県西宮市江上町三番三五号所在の所轄西宮税務署において、同税務署長に対し、その所得金額は八三一〇万四五七四円で、これに対する法人税額三〇二二万八三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告人会社の前記事業年度における正規の法人税額一億九八七五万三三〇〇円と右申告税額との差額一億六八五二万五〇〇〇万円(別紙税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目) かっこ内は検察官請求の証拠番号を示す

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官調書(乙一〇)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書五通(乙五ないし九)

一  河田伊都美(甲五)及び奥野直雄(甲六)の大蔵事務官に対する各質問てん末書謄本

一  大蔵事務官作成の査察官調査書七通(甲八ないし一四)

(法令の適用)

罰条 被告人渡辺につき 法人税法一五九条一項

被告人会社につき 同法一六四条一項、同法一五九条一項

刑種の選択 被告人渡辺につき 懲役刑を選択

罰金額の選択 被告人会社につき 同法一五九条二項

(免れた税額に相当する金額以下とする。)

刑の執行猶予 被告人渡辺につき 平成七年法第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条一項により同法による改正前の刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、ほ脱額は一期分のみで一億六〇〇〇万円以上、ほ脱率は約八五パーセントに及ぶ脱税事件であり、その事案の内容は、パチンコ店経営の会社を営んでいた被告人渡辺が、相当の利益を得たにもかかわらず、将来に備えて、売上の一部を除外し、簿外の資金を蓄えていたというものである。被告人には所得を正直に申告する意思が乏しかったことが窺われ、正直な納税者を愚弄する行為と言わざるを得ない。

しかしながら、本件の検挙後は、脱税を素直に認めて反省し、捜査にも進んで協力していること、阪神大震災により大きな被害を受けたにもかかわらず、借入をしてまで本税、延滞税、重加算税等を既に納税していること、今後は税理士の指導を受けて、二度と脱税に至ることがないように対策を講じていること、本件以外の前科前歴はなく、善良な社会人であることなど被告人に有利な事情を総合すると、被告人渡辺に対しては刑の執行を猶予することを相当と認めた。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 坪井祐子)

税額計算書

<省略>

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